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雨仕舞い(あまじまい)

雨水を建物内部へ侵入させないための形状・納まりの工夫

雨仕舞い(あまじまい)とは、屋根や外壁、開口部、接合部などから建物内部へ雨水が浸入しないようにするため、部材の形状や配置、勾配、納まりを工夫して排水や遮水を行う設計・施工手法を指します。防水が防水材や塗膜、防水シート等による物理的遮断を目的とするのに対し、雨仕舞いは雨水を"当てない・流す・溜めない"ことで浸入リスクを根本から減らす発想です。例えば、屋根の軒やけらばの出、外壁の水切り金物、サッシ上部の水返しや庇、外壁の目地形状などが代表的な雨仕舞い部位です。歴史的には防水材料が普及する以前から使われてきた耐久的な方法であり、適切に設計・施工すれば長期間性能を維持でき、かつ湿気の逃げ場を確保しやすいため結露や腐朽の抑制にも寄与します。

雨仕舞いと防水の違い

機能の重なりはあるが目的・アプローチが異なる

雨仕舞いと防水はどちらも雨水の侵入を防ぐ目的を持ちますが、アプローチに明確な違いがあります。防水は主に防水層(アスファルト防水・シート防水・塗膜防水など)や防水テープ、防水パッキン等によって物理的に水を遮断します。これに対し雨仕舞いは、雨水が部位に直接当たらないよう庇や水切り、勾配を設ける、あるいは水が溜まらないよう排水経路を整えるといった、形状・納まり・配置の工夫による"受けない"設計思想です。両者は併用されることが多く、雨仕舞いで負担を減らすことで防水層の耐久性を高められます。

主な雨仕舞い部位と手法

部位ごとの具体例と設計上の配慮点

屋根まわり

軒先…出幅を確保し外壁への直接雨掛かりを減らす。軒先水切り金物で雨水を軒樋へ導く。
けらば…けらば水切り金物で毛細管現象を防ぎ、外壁上端からの浸入を抑える。
棟…棟包み金物や換気棟で防水紙と連続させ、風雨時の吹込みを防ぐ。

外壁まわり

開口部(サッシ・ドア)…上部に庇や水返しを設け、雨掛かりと吹込みを軽減。水切り金物で下方へ排水する。
外壁見切り部…胴差しや幕板部に水切りを入れ、段差部への水滞留を防止。
外壁の出隅・入隅…水返しの付加やシーリング下地の段差解消により、長期的な止水性を確保。

その他

ベランダ・バルコニー立上り…笠木の水返し形状と排水ドレン位置の適正化。
外構接合部…土間や庇の勾配、立上りの確保による雨掛かり抑制。

雨仕舞い設計・施工時の注意点

耐久性・通気性・維持管理を意識した計画

勾配の確保

屋根・庇・水切りは最低勾配を守り、排水速度と水捌けを向上させる。

水返し形状

端部や重ね部は水返しを付け、逆流や毛細管現象による浸入を防ぐ。

通気経路の確保

外壁通気層や棟換気を組み合わせ、湿気滞留を防止。

部材の耐久性

紫外線・塩害・酸性雨など地域特性に応じた素材(ガルバリウム鋼板・ステンレス・樹脂等)を選定。

防水との併用

雨仕舞いで水掛かりを減らし、防水層の劣化速度を抑える。

定期点検

強風雨後・積雪後は特に、金物浮きやシーリング劣化、勾配の変化を点検する。

雨仕舞い(あまじまい)についてまとめ

「受けない・流す・溜めない」で防水層の寿命を延ばす

雨仕舞いは、雨水の浸入を防ぐための形状・納まりの工夫であり、防水と併せて建物の耐久性向上に不可欠な技術です。防水材で水を遮断するだけでなく、そもそも雨を受けない・流す・溜めない設計によって、防水層への負荷を軽減し長寿命化を実現します。屋根や外壁、開口部など各部位ごとの適切な雨仕舞いは、結露や腐朽の防止、快適性の維持にも直結します。計画時から防水との役割分担を明確にし、定期的な点検と補修でその性能を長期間維持することが重要です。

建物材質・種類 - 屋根各部名称

葺く
雨仕舞い
勾配

切妻と寄棟
軒先


垂木
野地板
下葺き材
破風板
軒天
水切り板金
雪止め金具