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ガルバリウムの庇(ひさし)

ガルバリウム製の庇は、住宅や小規模施設の窓・扉など開口部の上部に取り付ける小屋根で、亜鉛・アルミ・シリコンを組み合わせた合金を用いることにより、軽量性・耐食性・耐摩耗性をバランス良く備えた外装部材です。傷が付きにくい性質や施工性の良さから広く普及しており、シンプルな意匠で様々な外観スタイルに馴染みやすい点も採用理由となっています。

庇は外壁から片持ち状に突き出す構造が一般的で、出幅・幅・勾配・水切りの納まりが機能性と見た目を左右します。ガルバリウムは軽量であるため支持金物や躯体への負担を低減でき、既存住宅の後付けにも適しています。一方で、衝撃には弱く凹みやすい特性があり、飛来物や人為的な打撃が想定される場所では補強や部材厚の見直しが必要です。また、環境によっては塩害や電食(異種材接触による腐食)への配慮が不可欠です。低勾配の屋根形状では滞水・汚れ残りが起きやすく、寿命低下や美観低下につながるため、勾配・排水計画・清掃性を含めた総合設計が求められます。

主な仕様とバリエーション

ガルバリウム庇の仕様は、板厚・成形方法・役物構成・支持方式・表面仕上げの組み合わせで決まり、性能と価格、施工性、意匠のすべてに影響します。

板厚と形状

庇パネルはフラット、リブ付、波形など。リブや折り返し形状を設けると剛性を稼げる一方、納まりは複雑になります。板厚は出幅・支持スパン・風荷重・積雪条件に応じて選定します。

役物(納まり部材)

唐草、ケラバ、雨押え、水切り、鼻先見切りなどを組み合わせ、毛細管現象や吹込みを抑えます。外壁との取り合いでは防水紙や下葺き材との連携が重要です。

支持方式

壁付けブラケット、サイドブラケット、上部ロッド併用など。出幅が大きいほど回転モーメントが増すため、取付ピッチやアンカー仕様、補強材の有無を見直します。

表面仕上げ

素地のままの金属感を活かす仕様から、焼付塗装・フッ素樹脂塗装などの塗膜仕上げまで幅広く、意匠と耐候性のバランスで選択します。光沢を抑えたマット系は汚れの視認性を低減できます。

雨樋・排水計画

庇上の雨水を確実に外へ逃がすため、必要に応じて一体型の樋やドレンを設けます。低勾配では特に排水経路の詰まりを想定し、清掃口や落葉対策部材の配置が有効です。

取り合い材と絶縁

ステンレスビス・銅部材・コンクリートなどとの接触部は電食の恐れがあるため、座金・シーリング・絶縁テープで介在層を確保します。

耐久性・価格・性能

ガルバリウム庇は「軽い」「錆びにくい」「摩耗に強い」という特長を持ちながら、衝撃・環境腐食・勾配条件に敏感です。期待耐用年数と価格の目安を把握し、用途・立地に応じて仕様を最適化します。

耐久性の目安

約25年〜30年程度。海浜・工業地域や低勾配など厳しい条件では短くなることがあり、定期点検と早期補修で寿命を引き延ばします。劣化兆候には、塗膜の退色・チョーキング、端部の錆、シールの痩せ・ひび、ブラケット部の緩み、面材の凹みなどがあります。

価格の目安

13,000円〜100,000円/箇所。出幅・幅・板厚・役物点数・支持金物の強化・塗装グレード・施工条件(高所作業・足場)で増減します。特注色や意匠リブ、ロッド支持は加算対象です。

メリット

傷に強い。摩耗に強い。錆びにくい。軽量で施工しやすい。シンプルなデザインで外観に馴染む。

デメリット

落ち葉や木片が触れると電食作用を起こし錆が発生し得る。衝撃に弱く凹みやすい。工場付近や勾配の低い屋根には不向き。塩害を受けやすい。

比較の視点

アルミ庇:さらに軽量で腐食に強いが、耐火性や衝撃に課題、熱伝導が高い。ステンレス庇:剛性・耐食に優れるが重量・価格が上がる。ポリカ庇:採光性・軽量性に優れるが表面傷・黄変対策が必要。ガラス庇:意匠性が高いが重量増・施工費増に留意。

設計・施工・維持管理と保険の要点

耐風・耐雪・防水・防食を満たす細部納まりと、環境条件に応じた材料選定・保全計画が、ガルバリウム庇の性能を長期にわたり安定させます。

設計

荷重条件:地域風速・積雪・落下物の想定を反映し、出幅に応じて支持点数や金物断面を増やします。防水納まり:外壁との取り合いでは雨押え・捨て水切り・三角シールを適所に配置し、毛細管上昇を断つ段差・水返しを設けます。勾配と排水:低勾配は滞水・汚れの温床となるため、必要勾配を確保し、樋やドレンの詰まりを想定したメンテナンス動線を計画します。電食・塩害対策:異種金属との直接接触を避け、座金や絶縁材で介在。海浜や工場付近では塗装グレードや膜厚の引き上げを検討します。

施工

躯体への緊結:仕上げ材のみの固定を避け、梁・間柱等の躯体に確実にアンカーを効かせます。切断端部処理:切断面・穿孔部は速やかに防錆処理・シールで保護し、端部からの腐食進行を抑制します。見え掛かり精度:通り・水平・勾配の確認、鼻先の滴り線形成、継手の重ね代・止水を厳守します。

維持管理

定期点検:年1回(海浜・工業地・強風地は半期毎)を目安に、塗膜の退色・ビス緩み・シール痩せ・凹み・錆の有無を確認。早期補修で進行を抑えます。清掃:落ち葉・木片・砂塵を除去し、樋や水切りの詰まりを解消。付着物を長期間触れさせないことで電食・汚染のリスクを低減します。

保険の観点

台風・突風・飛来物・雪害などによる破損・剥離は、火災保険の風災・雪災等で対象となる可能性があります。経年劣化・施工不良起因は対象外になりがちです。被災時は発生日・気象条件・破損部位・飛散物痕跡・寸法を写真とともに記録し、修繕見積は部材・数量・範囲を明確化すると円滑です。落下による第三者損害が懸念される場合は、施設賠償責任保険の検討も有効です。

ガルバリウムの庇についてまとめ

軽量・耐食・耐摩耗という長所を活かし、風雨・紫外線・環境腐食への配慮と適切な勾配・排水計画を組み合わせることで、ガルバリウム庇は開口部を長期にわたって確実に守る外装解となります。

耐久性は約25年〜30年、価格は13,000円〜100,000円/箇所が目安です。採用時は、出幅・支持方式・役物・塗装グレード・電食対策・塩害対策・清掃動線を総合的に設計してください。衝撃で凹みやすい点や、工場付近・低勾配・海浜などの厳しい環境で性能が低下しやすい点を踏まえ、板厚や補強、勾配・排水、絶縁・防錆処理を徹底すれば、シンプルな意匠と機能性を両立できます。運用段階では、落ち葉や木片の除去と定期点検・早期補修をルーチン化し、小さな劣化を未然に抑えることが肝要です。災害時の破損は保険適用の可能性があるため、日頃から写真・型式・数量の記録を整備しておくと復旧がスムーズです。用途・立地・メンテナンス方針に合わせ、最適なガルバリウム庇計画を進めてください。

建物材質・種類 - 庇材料

アルミニウム
ガラス
木材
ポリカーボネート
ガルバリウム