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複合サッシ(サッシ材料)

複合サッシは二つ以上の素材を一体化した窓枠で、代表格が「屋外側:アルミ/室内側:樹脂」のアルミ樹脂複合サッシです。外気や雨・紫外線にさらされる外側には軽量で耐食性・剛性に優れるアルミを、室内側には熱を伝えにくく結露に強い樹脂を配して、双方の長所を引き出します。細い見付でシャープに納めたい意匠要望と、断熱・気密・メンテナンス性を両立しやすいことから、戸建・集合住宅・非住宅の幅広い計画でスタンダードな選択肢になっています。

耐久性の目安は約二十〜四十年。価格は一枚あたり三万円〜二十万円前後で、既製/オーダー、サイズ、開閉方式、ガラス(単板・複層・Low-E・トリプル)、スペーサー、金物グレード、色(外内別色や木目)、施工方式(カバー工法/抜き替え)、搬入条件によって変動します。単一素材の最高峰(例:樹脂フル仕様や木製高断熱)に比べ断熱・遮音で僅差となる場面もありますが、外装側の耐候・耐久や細框の意匠自由度まで含めると総合バランスに優れています。

基本構造と性能の考え方

「外は強く、内はあたたかく」。素材配置と断面設計で、気密・水密・断熱を同時に高めます。

● 外部アルミ×内部樹脂の役割分担

屋外側のアルミ形材は押出しで精度の高い空洞断面を形成でき、水密・排水チャンネルや補強室を内部に確保しやすく、風圧・熱変形・開閉繰り返しへの耐性を担います。室内側の樹脂は低熱伝導により枠表面温度の低下を抑え、露点到達を遅らせ結露リスクを低減。触れたときの冷たさも緩和し、居室の体感温度を底上げします。

● 熱橋対策と気密ライン

断面内部に樹脂パーツや熱遮断部材を設けて熱橋(ヒートブリッジ)を抑制し、召し合わせ・戸先・下枠にパッキンやガスケットを適正配置することで、気密・水密の両立が可能です。引違いでは戸先の当たりと召し合わせの二重気密、開き系ではガスケットの押圧とヒンジ強度が性能の肝になります。

ガラスはLow-E複層やガス封入、樹脂スペーサーとの組み合わせが定番。樹脂側と相まって窓全体の熱貫流率を下げ、冷輻射・日射熱の侵入を抑えます。必要に応じて内窓(二重化)や外付ブラインド・庇を併用すると、夏冬ともに効率が向上します。

耐久性・価格・ライフサイクルコスト

材料そのものより先に消耗する部位に注目し、更新前提の維持計画で長寿命化を図ります。

● 耐久性(約20〜40年)の内訳

フレームは長寿命ですが、パッキン・ブラシ・戸車・クレセント・ヒンジ・シリンダーといった可動・気密部材が先に劣化します。年一回の清掃・動作点検・戸車調整、五〜十年スパンの消耗品交換で性能を維持。外装面のアルミは清掃主体で長持ちし、室内樹脂は直射紫外線の負荷を避けると安定します。

● 価格(30,000〜200,000円/枚)の見方

小型FIXや既製引違いは下限寄り。大型・たてすべり・片開き・テラスドア、防火設備、内外別色や木目ラミ、トリプルガラス、電気錠付きは上限に近づきます。見積比較は「ガラス仕様・色・金物・面格子・網戸・カバー工法の有無・復旧範囲・搬入条件」まで揃えるのが鉄則。運用電気代の低減や結露トラブルの回避まで含めたライフサイクルで評価すると、費用対効果が見えやすくなります。

メリットとデメリットの整理

採用前に長所・短所を明確化し、仕様・ディテール・運用で弱点を抑えます。

● 主なメリット

(1)結露しにくい:室内側樹脂で表面温度が下がりにくく、露点到達を遅らせます。(2)断熱性:Low-E複層と組み合わせた窓全体の断熱で冷暖房効率が向上。(3)外装耐久:アルミ外装の耐候・耐食と軽量・剛性により細い見付を実現しやすい。(4)バランス:意匠・性能・メンテの総合点が高く、幅広い条件で扱いやすい。

● 主なデメリット

(1)価格が割高:アルミ単体に比べ初期費用が上昇。(2)最高峰比較では僅差:断熱・遮音は樹脂フルや木製高断熱に一歩及ばない場面も。(3)シリーズにより枠見付が太く感じる場合がある。→解決策は後述の仕様最適化とディテール調整で対応可能です。

断熱・結露・遮音の実務対策

ハード(仕様)とソフト(運用)をセットで設計すると、体感と光熱費の両面で効きます。

● 仕様で底上げするポイント

Low-E複層+ガス封入+樹脂スペーサーで窓の熱損失を低減。引違いは召し合わせ二重気密・戸先パッキンの密着、開き系はガスケット押圧とヒンジ強度を重視します。寒冷地や騒音対策ではトリプル化や内窓(二重化)で更に性能を上げ、外付ブラインド・庇・スクリーンで夏季の日射遮蔽を強化します。

● 運用で安定させるポイント

冬季は換気・除湿・送風で窓際の湿った空気を動かし、朝の拭き取りを習慣化。加湿器は窓から離し、カーテンや家具との間に空気層を確保します。騒音は板厚差のある複層や合わせガラスを選び、内窓の空気層厚を最適化すると透過損失が向上します。

設計・施工のチェックポイント

性能はディテールで決まります。取付精度・排水・シール・断熱連続を要点化します。

● 取付精度と開口方式の適合

四周の通り・対角・レベリングを厳密に合わせ、開口方式(引違い・たてすべり・片開き・上げ下げ・FIX)を用途と方位で選定。大開口は方立や補強、戸車容量の余裕取りで長期安定を図ります。細框意匠は風圧・たわみの検討を忘れずに。

● 排水計画と水返し・気流止め

下枠ドレンの連続性を阻害しない納まりとし、室内側への逆流は水返しや段差で抑制。外周シールは三面接着を避け、プライマー・目地寸法を遵守します。周囲の断熱材を欠けなく充填し、気流止めを連続させると熱橋と隙間風が抑えられます。

火に対する挙動は周辺の防火設備・下地・ガラス仕様で決まります。防火区画にかかる場合は該当の認定仕様を選定し、開口部の役物・見切りも含めた一体設計で安全を確保します。

メンテナンスと長持ちのコツ

「清掃・点検・微調整・消耗品交換」をルーチン化すれば、体感性能を長く維持できます。

● 清掃・点検の基本

レール溝の砂塵は戸車やブラシを摩耗させるため、掃除機とブラシで定期除去。外装アルミは中性洗剤で洗浄し、塩分や粉じんは水洗いで押し流します。室内樹脂は溶剤・研磨剤を避け、柔らかい布で拭き上げます。クレセントの掛かり・締結部の緩み・パッキン硬化は年一回確認を目安に。

動作が重い・音がする場合は戸車高さを調整し、潤滑は樹脂やゴムを傷めない推奨品を薄く使用。消耗部材は症状が軽いうちの交換が効果的です。直射の強い方位は外付遮蔽で室内側樹脂の劣化を抑えられます。

リフォーム導入と適材適所

工期・復旧・体感改善のバランスで方式を選び、優先順位をつけて段階導入すると費用対効果が上がります。

● カバー工法/抜き替えの選択

カバー工法は既存枠を残して新枠を被せるため、外装・内装の復旧が少なく短工期・低騒音。ただし有効開口は僅かに小さくなります。抜き替え(ハツリ)は開口を維持できる一方、工期と復旧費が増加。採光・通風・動線・予算を踏まえて選びます。

優先は滞在時間が長い居室・結露や西日が厳しい窓・騒音源に面した開口。寒冷地や沿岸部ではガラスと気密材のグレード、外付遮蔽や庇の設置で体感が大きく改善します。街路景観やファサードの意匠を重視する計画でも、複合サッシは細框と断熱のバランスで効果を発揮します。

複合サッシについてのまとめ

複合サッシは、外側アルミの耐候・剛性と、内側樹脂の断熱・結露抑制を組み合わせ、意匠・性能・維持のバランスに秀でた窓枠です。耐久は約二十〜四十年、価格は一枚あたり三万〜二十万円が目安。単素材の最高断熱に比べるとわずかな差が残る場面もありますが、外装耐久や細框の設計自由度まで含めた総合評価では多様な住まいに適合します。

採用時は、Low-E複層・ガス封入・樹脂スペーサーなどの仕様最適化、召し合わせ・戸先・ドレンのディテール、外付遮蔽や庇の併用、清掃・点検・微調整・消耗品交換という運用の四点を押さえることが成功の近道です。工期と復旧のバランスでカバー工法と抜き替えを使い分け、優先窓から段階導入すれば、結露・寒さ・暑さ・騒音といった日々の不満を着実に低減できるはずです。

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