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庭木修理費用特約

庭木修理費用特約は、台風・暴風・雪害・落雷・火災などの事故で損傷した庭木(樹木・生垣・植栽など)の修復・復旧に要した費用を補償する、火災保険のオプション特約です。建物付帯の外構と同様に「建造物」として扱われる設計が一般的です。

火災保険の対象は大きく「建物」と「家財」に区分されます。門・塀・カーポート・物置など動かせない外構は建物に含まれるのが通例で、庭木も敷地に定着する不動の財として建物側に区分される取り扱いが一般的です。庭木修理費用特約は、この建物側の被害に付随して、倒木・幹折れ・枝折れ・根返り・傾斜・幹の損傷・生垣の破損などを補修・撤去・再植栽するための実費(保険金額や限度額の範囲内)をカバーします。事案が発生したら、撤去・処分を急ぐ前に、まず保険会社や代理店へ連絡し、必要な申請・確認・撮影・見積取得の手順を踏むことが肝心です。

補償の対象範囲(何がカバーされるか)

自然災害・火災等による庭木の「突発的な損害」に関する修復・撤去・再植栽費用が主対象です。付帯する付随費用(応急処置・運搬・処分)も範囲に含まれる設計が多いです。

典型的には、台風や強風で生垣が倒れた、降雪で枝が折れて通行に支障が出た、落雷や火災で庭木が焼損・枯死した、といった事故が該当します。倒木に伴う切断・撤去・運搬・処分費、支柱・結束などの応急措置、同等種の再植栽や補植の費用が支払対象となるのが一般的です。なお、補償の上限は契約ごとに定める特約限度額(例:1事故あたり◯万円、年間支払回数制限など)で管理されます。建物の修理と同一事故で生じた庭木被害は、建物本体とは別枠の限度額で取り扱われる設計もあるため、限度額・免責金額の有無を事前に把握しておくと安心です。

対象外・注意点(どこまでが保険の仕事か)

経年劣化・虫害・腐朽・枯死などの「徐々な変化」や、自己都合の伐採・剪定は原則対象外。第三者への賠償は別契約(個人賠償など)で対応します。

庭木の寿命や管理不足による倒木、根腐れやシロアリ・病虫害による枯損は、多くの約款で補償対象外です。また、美観目的のリフォーム・配置換え・剪定・伐採は保険支払の対象ではありません。倒木が隣地の車やフェンスを壊した等の他人の損害は、火災保険の「庭木修理費用特約」ではなく、別の賠償責任保険(個人賠償責任特約など)の守備範囲です。倒木が電線・道路を塞いだ場合の行政対応費用は、公的負担・自己負担・保険負担の線引きが生じうるため、事後に明細・証跡を確保しておきましょう。再植栽については「同等・近似種」「同等規模」等の条件が付くことがあり、希少種・大型樹の高額な復旧は上限額に達しやすい点にも注意が必要です。

請求の流れ(時効・先行撤去のリスク・必要書類)

事故直後の「記録と連絡」が最重要です。撤去前に申請手続きを開始し、写真・見積・被害状況の説明をセットで残しましょう。

事故発生後は
(1)安全確保
(2)保険会社・代理店へ連絡
(3)被害の全景・近景・詳細の写真撮影
(4)応急処置(二次被害防止)
(5)業者見積の取得
(6)所定の申請書類提出
が基本の順序です。撤去・処分を先に完了してしまうと、因果関係や被害程度の立証が難しくなり、支払対象外になる恐れがあります。申請の期限(保険金請求権の時効)は多くの契約で3年の範囲にありますが、各社・各契約で異なるため、実際は約款・しおりで確認しましょう。写真は「倒木前後」「根元・折損部」「周辺の状況」「樹高・幹径の目安」などを網羅し、撤去搬出・処分費・再植栽費の内訳が分かる見積・請求書をそろえると審査がスムーズです。

よくある質問(限度額・免責・同一敷地の複数本)

限度額は「1事故あたり」設定が主流。同一台風で複数本が倒れた場合は、まとめて一事故扱いになる設計が多く、合算で上限に達する点に注意します。

免責金額(自己負担)が設定される契約もあり、少額損害は自己負担内で処理されることがあります。敷地外(借地や離れた駐車場)・共有部分の庭木は、対象地の指定や共有者の持分関係で取り扱いが変わります。管理会社・組合がある集合住宅では、専用庭と共用庭で補償窓口が異なる場合があるため、事前に管理規約・専用使用権の範囲を確認しましょう。高所作業車が必要な現場や、電線近接での保安要員配置が必要な撤去は費用が膨らみやすく、上限額で賄い切れないケースも想定されます。

見積・業者手配のポイント(相見積と内訳の精度)

「どの木を、なぜ、どの範囲で、どう直すか」を明確化。撤去・処分・再植栽・支柱・土壌改良・清掃まで、作業単価・数量・小計の分解が肝心です。

見積は可能なら2〜3社で相見積を取り、作業項目(伐採・剪定・枝払い・抜根・整地)、機械・車両(高所作業車・ユニック・チッパー)、人員数、運搬距離、処分費、再植栽の樹種・規格(根鉢サイズ・樹高・本数)、支柱・ワイヤー、客土・土壌改良材、養生・清掃の有無を明記してもらいましょう。写真付きの被害箇所リストや、敷地配置図・植栽配置図があると、査定担当者とのコミュニケーションが円滑になります。倒木により門扉・フェンス・カーポート・物置など外構が破損した場合は、庭木と外構の各費用を分けて見積するのが望ましいです。

再植栽・復旧設計(同等性・安全性・将来管理)

再植栽は「同等種・同等規模」が基本。将来の耐風性と管理容易性を踏まえ、樹種・株立ち・支柱計画・根系の発達を見据えた仕様を選択します。

大型高木をそのまま復旧するよりも、耐風性・耐雪性の高い樹種へ変更する、株立ち構成で倒伏リスクを分散する、密植を避けて枝張りスペースを確保する、といった改善策が合理的な場合があります。生垣は、基礎土壌の改善・防草シート・灌水ラインの設置で活着率と維持性を高められます。支柱は矢作り(三点式など)を適切な期間で運用し、根鉢の固定と幹傷防止を両立させます。景観条例や隣地越境、電線支障の観点でも、将来管理と安全性のバランスを検討しましょう。

火災保険実務との接点(併用特約・写真・説明責任)

庭木特約は「建物本体」「外構損害」「片付け費用」「個人賠償」など他の補償と並走します。事故の全体像を一枚絵で示す資料化が効果的です。

写真台帳(全景→被害箇所→ディテール→採寸)と被害マップ、時系列メモ、見積内訳、請負契約書・請求書の整合を確保しましょう。片付け費用や残存物取片づけ費用特約が付帯していると、撤去・清掃の一部が別枠で支払えることがあります。個人賠償責任特約があれば、倒木が第三者に与えた損害の賠償もカバーできる可能性があります(示談交渉サービスの有無も確認)。一点突破ではなく、事故全体を俯瞰した申請ストーリーを用意することで、査定の納得性が高まります。

庭木修理費用特約についてまとめ

庭木修理費用特約は、自然災害等で損傷した庭木の「撤去・処分・復旧・再植栽」を実費ベースで支える心強い備えです。撤去前の記録・連絡と、限度額・対象外の理解が成功の鍵です。

事故直後は安全確保と証跡の保存を最優先にし、保険会社への連絡・写真記録・見積取得・必要書類整備の順で手続きを進めましょう。限度額・免責・対象地・共有の扱い・再植栽の同等性など、実務上の論点を事前に押さえることで、ムダのない復旧計画と適正な保険支払いにつながります。倒木が第三者に及ぼした損害は賠償責任の守備範囲で検討し、全体像を整理した資料で説明性を高めることが、円滑な解決への近道です。