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動産

動産は、不動産に当たる土地や土地に定着した建物などを除いた「移動が可能な財産」全般を指します。私たちの生活に直結する家具や衣類、家電はもちろん、業務用の機械設備や在庫商品、現金・商品券・乗車券などの有価証券も幅広く動産に含まれます。

不動産は宅地や農地、地盤に定着した建物などのように「動かせない資産」を指します。一方、動産は基本的に物理的移動が可能です。家具・家電・衣類などの生活用動産、パソコンや工具、在庫・商品などの事業用動産、さらに商品券や観覧チケットのような無記名で譲渡性の高い有価証券までが含まれます。保険実務では、動産がどこにあり、誰の占有にあるか、どのような危険にさらされるかで補償の考え方が変わります。

定義と不動産との違い

不動産は動かせない資産、動産は移動可能な資産という大枠を押さえると理解が進みます。

建物は原則として不動産ですが、建物に固定されていない什器や備品は動産です。賃貸店舗の造作のうち、原状回復時に撤去できる棚や機器は動産に該当しやすく、撤去できない壁・床・天井の仕上げは不動産と扱われるのが一般的です。車両やオートバイ、自転車、船舶、航空機なども移動性の観点から動産に含まれますが、登録制度や専用保険の有無など取り扱いが別建てになるものもあります。

動産の主な分類(生活用・事業用・有価証券など)

生活用動産、事業用動産、有価証券や貴重品、美術品など、性質と用途で把握すると整理しやすくなります。

生活用動産の代表はソファやベッド、冷蔵庫や洗濯機、衣類やカバン、趣味の道具などです。事業用動産にはパソコン・サーバー、製造機械、工具、測定器、販売用の在庫、展示品、什器備品が含まれます。有価証券類は現金、預金通帳、小切手、商品券、乗車券、劇場の観覧チケットなどで、譲渡性や換金性の高さから管理と補償条件が厳格になるのが通常です。宝石・貴金属・骨とう・美術品は評価方法や保管の要件が特別に定められることが多く、契約時点での申告や写真記録、鑑定書の保管が推奨されます。

保険実務での取り扱い(家財保険と動産総合保険)

個人は家財保険、事業者は動産総合保険という住み分けが基本です。

個人の住まいでは火災保険の一部として家財保険を付け、住居内の生活用動産を火災・落雷・風災・水災・盗難などから守ります。事業者の場合は「動産総合保険」を利用し、社内の機械設備や什器・在庫に加え、営業先への持ち出し品や輸送中の貨物まで広く対象にできる設計が一般的です。補償範囲は契約により異なり、破損・汚損のような偶然な事故までカバーできるプランもあります。現金・有価証券は対象外または支払限度が低いことが多く、盗難時の管理要件や警報設備の設置が条件になることもあります。

補償の対象・対象外の目安

対象範囲は保険の種類と約款に依存します。実務の目安を把握するとギャップを避けられます。

スマートフォンやノートパソコンは動産ですが、単純な紛失や置き忘れは補償対象外となることが多いです。漏水により衣類や家具が損害を受けた場合は家財保険で対象になりやすい一方、データやソフトウェア自体の損失は対象外となるケースが目立ちます。現金や商品券は支払限度が設定されがちで、業務上の売上現金は保管方法によっては対象外となります。賃貸物件の造作については、撤去可能な什器は動産として扱われやすい一方、固定化された床・壁・天井は不動産側の補償で検討するのが一般的です。

評価方法と必要書類(時価と再取得の考え方)

支払額は評価方法で変わります。証憑の整備は最重要の備えです。

多くの契約では「時価」または「再取得価額」のいずれかで支払われます。時価は購入価格から使用年数に応じた減価を差し引いた額、再取得価額は同等品を改めて購入するのに必要な額の考え方です。保険金請求に際しては、購入時のレシートや請求書、型番・製造番号が分かる写真、設置状況の記録が有効です。貴金属や美術品は鑑定書や証明書を保管し、定期的に撮影した写真と合わせて更新しておくと査定が円滑になります。

保管・持ち出し・輸送中のリスク管理

動産は移動するからこそ、保管と移送の場面での対策が重要です。

住居内では施錠や窓の補助錠、防犯カメラ、耐火耐水の保管庫などで盗難・水災リスクを下げられます。持ち出し時は施錠できるカバンの使用、車内放置の回避、置き忘れ防止タグの活用が有効です。事業者は輸送中の破損・盗難に備え、梱包の強化や荷扱いラベルの徹底、運送人の責任範囲の確認を行いましょう。倉庫保管やイベント展示の期間は、保管場所の防火・防水・警備体制と保険の対象地指定が適合しているかを事前に確認します。

よくある誤解とグレーゾーン

「動くものなら全部補償される」という理解は危険です。契約条件で線引きが存在します。

無記名で譲渡可能なチケット類は動産であっても、補償対象外または限度額が小さいことが一般的です。テナントの内装についても、躯体に固定された工事は不動産側で扱う前提が多く、動産保険では範囲外となり得ます。ソフトウェアや設計データなどの無体物は物的損害の対象から外れがちで、特約や別契約が必要です。動産の定義そのものは広範ですが、保険実務では危険・管理・評価の妥当性を確保するための条件設定が行われている点を押さえましょう。

動産についてまとめ

動産は生活や事業の現場にある「動かせる資産」の総称で、補償は家財保険や動産総合保険で設計します。

分類や評価、保管状態、対象地指定、持ち出しの有無などで補償内容は大きく変わります。現金・有価証券や貴重品は管理要件や限度額の確認が欠かせません。購入記録や写真の整備、盗難や水災への備え、輸送時の梱包と運送条件の確認を徹底し、契約時には評価方法や対象範囲を明確にしておくことで、いざという場面でのカバー漏れを防げます。