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土砂災害危険予測箇所図

土砂災害危険予測箇所図は、土石流・地すべり・急傾斜地崩壊などの危険が想定される地点を抽出し、住民や事業者が「どこで・どんな土砂災害が起こり得るか」を事前に把握するための基礎資料です。避難計画や土地利用、保険・防災投資の判断に役立ちます。

この図は、現地の地形・地質・降雨特性・渓流の形状などの調査結果をもとに、危険が「想定される可能性」を示すものです。行政が法令に基づいて指定する「土砂災害警戒区域(いわゆるイエロー)」「特別警戒区域(レッド)」とは性格が異なり、まず広く危険の目安を示して注意喚起するための資料と理解しましょう。

図の位置づけと他地図との違い

予測箇所図は「危険の芽を可視化」する地図です。法的規制を伴う警戒区域の指定とは別で、早めの備え・情報共有に使います。

● 予測箇所図のねらい

危険が想定される渓流や斜面を面的・線的に整理し、住民や自治体が警戒体制や避難行動の準備を進めやすくすることが目的です。指定の前段階での「注意喚起資料」として活用されます。

● 警戒区域等との違い

警戒区域・特別警戒区域は、より詳細な検討に基づく法的指定で、建築規制や対策義務などのルール運用に直結します。予測箇所図は指定の有無にかかわらず広く危険を知らせる性格が強く、両者を併読することが重要です。

● ハザードマップとの関係

市区町村の総合的なハザードマップには、水害や地震など他災害と重ねて表示できるものがあります。土砂災害に関しては、予測箇所図・警戒区域・避難所・避難経路を合わせて確認し、家庭のタイムラインに落とし込むのが効果的です。

対象となる3タイプの土砂災害

土砂災害は大きく「土石流」「地すべり」「急傾斜地の崩壊」に区分されます。現象ごとに前兆・到達範囲・避難のタイミングが異なります。

● 土石流(渓流沿いで一気に流下)

大雨で谷や渓流に堆積した土砂・石・倒木が水と混じって高速で流下します。カーブ外側や谷出口の扇状地に到達しやすく、短時間で壊滅的な被害を与えるため、警戒レベルの早い段階での避難が要点です。

● 地すべり(広範囲がゆっくり移動)

地下水や地層の弱面が原因で、斜面全体が比較的ゆっくり動きます。ひび割れや井戸水の濁り、樹木の傾きなどの前兆がみられる場合があり、長雨や融雪期に注意が必要です。影響範囲が広く、建物被害が長期化しがちです。

● 急傾斜地の崩壊(崖崩れ)

急な斜面や切土・盛土の境界で、短時間の豪雨や地盤の緩みにより崩落します。背後が崖の宅地・道路法面・擁壁の老朽化などは要注意で、到達範囲は狭くても致命的な被害に直結します。

地図の読み方(凡例・縮尺・等高線・渓流番号)

凡例の色分けと地形情報をセットで読むのがコツです。縮尺を意識し、等高線の密度や谷形状から到達方向を推定します。

● 凡例と色分け

土石流危険渓流・地すべり危険箇所・急傾斜地崩壊危険箇所の3区分が基本です。自治体によって表記が異なる場合があるため、凡例の注記を必ず確認します。境界線付近では安全側に判断します。

● 縮尺と等高線

縮尺が大きいほど位置の特定精度は上がりますが、住宅地図等と重ねて玄関・寝室・避難経路の実位置に落とし込むことが実務上重要です。等高線が密な場所は急傾斜、谷形は土石流の通り道になりやすい傾向があります。

● 渓流番号と現地確認

土石流の区分では渓流ごとに管理番号が振られていることがあります。対象渓流や谷出口の状況(堆積土砂・漂流木・砂防施設の有無)を現地で確認すると、具体的な危険イメージが持てます。

くらしと土地活用での実務ポイント

「住まい選び」「避難」「建替え・土地利用」の三場面で、予測箇所図を意思決定の起点にします。

● 住まい・施設の立地検討

新築・購入・賃貸の前に、候補地がどの区分にかかるかを確認します。背後斜面・谷出口・扇状地は慎重に評価し、避難方向と高台・堅牢建物の位置関係を必ずチェックします。学校・福祉施設など要配慮者関連は特に厳密に検討します。

● 家庭の避難タイムライン作成

大雨警報や土砂災害警戒情報が出る前の段階から、在宅・在学・在勤の状況別に発動基準を決めます。夜間・停電・道路寸断を想定し、徒歩で安全な高台へ向かうルートと代替ルートを用意しておきます。

● 擁壁・排水・庭の管理

排水溝や側溝の目詰まり、裏山の倒木・落石、古い擁壁のひび割れは要点検です。自治体の指導や専門家の調査を活用し、雨季前に最低限のメンテナンスを実施します。砂防施設の区域・管理者も把握しましょう。

通学路・通勤路上の危険箇所をマークして家族と共有し、雨量が基準を超える前に予定を前倒しで調整する運用が効果的です。地域の防災会・自治会の訓練日程にも参加しましょう。

保険実務での確認事項(火災保険・地震保険)

降雨を起因とする土砂災害は、一般に火災保険の「水災」等の補償で検討します。地震を起因とする斜面崩壊は地震保険の対象として扱うのが基本です。

● 原因の切り分けが最重要

同じ崩壊でも、豪雨による地盤緩みと地震動による崩落では、適用する保険が異なります。気象データ・罹災証明・現地写真や報告を整え、偶然な外来事象としての立証を意識します。

● 建物・家財・付帯設備の範囲

建物本体・門扉・擁壁・外構・太陽光等の扱いは商品で差が出ます。土砂流入による床上浸水・基礎周りの破損・屋外設備の埋没など、損害の類型ごとに補償可否を見積段階で確認しておきましょう。

過少保険や免責・限度額の設定次第で自己負担が増えます。危険予測箇所図や警戒区域の情報を、補償プランの説得材料として活用すると、加入者へのリスク説明が具体化します。

自治体での情報入手と更新チェック

最新の図面・凡例・注意書きを定期的に確認します。指定の追加や境界修正が行われることがあるため、更新情報の見落としを防ぎます。

● 掲載先と閲覧方法

都道府県・市区町村のウェブサイトや窓口、地域の防災パンフレットで閲覧できます。学校・福祉・医療・観光施設などは、来訪者向けの掲示・周知も検討しましょう。紙の配布物は古い場合があるので要注意です。

● 現地の聞き取り

過去の小災害や土砂の流下痕、排水の滞留などは、地図に反映されていないことがあります。自治会・消防団・管理組合のヒアリングで「生活の経験値」を取り込み、図面を補完します。

造成地の盛土・切土境や築古の擁壁は、現地での視認が欠かせません。図面だけで安全と判断せず、実地の点検・専門家の助言を組み合わせましょう。

よくある誤解と注意点

境界の外でも安全とは限らないこと、擁壁が万能ではないこと、夜間豪雨の避難は早いほど安全という原則を押さえます。

● 境界線の内外での油断

線の外にあるから安全という保証はありません。土砂の到達は地形で変わるため、近接している場合は同等の注意を払い、行動判断は気象・避難情報に基づいて早めに行います。

● 擁壁・砂防施設への過信

擁壁や砂防堰堤は適切な維持管理が前提です。老朽化や想定超過の降雨では性能を超えることがあるため、点検・補修・避難の三点セットでリスクを下げます。排水計画の適否も重要です。

夜間・停電・通信障害の条件下では避難が難しくなります。高齢者・乳幼児・障がいのある方は特に、警戒レベルが上がる前の段階で安全な場所へ移動する前提の運用を選びましょう。

土砂災害危険予測箇所図についてのまとめ

予測箇所図は「危険の芽を見つけて、早く動く」ための地図です。指定区域・ハザードマップ・現地確認を重ねて読むことで、命を守る行動が具体化します。

自宅・学校・職場・通院先の位置関係を地図で確認し、雨季前に避難先・経路・連絡方法を家族で共有しましょう。土地活用や保険設計では、予測箇所図の情報を根拠に対策を前倒しし、豪雨や長雨が続くときは迷わず安全側に行動する運用を徹底します。