損害保険料控除
損害保険料控除とは、個人が負担した一定の損害保険の保険料を所得から差し引いて、所得税・住民税の負担を軽くできる制度を指します。現在の実務では地震保険料控除が中心で、旧長期損害保険に限る経過的な取扱いが残っています。
かつては火災保険料など広い範囲で控除が認められていましたが、制度改正により、原則として地震保険に係る保険料のみが対象となりました。旧制度の長期損害保険については、一定の契約が存続している場合に限り経過措置として控除の対象となることがあります。制度の要点を整理し、年末調整や確定申告で漏れなく適用することが家計の軽減につながります。
対象となる保険と基本要件
主な対象は地震保険。旧長期損害保険は経過措置に該当する契約のみ対象です。
地震保険料控除は、居住用の建物や家財を対象とする地震保険の保険料が前提です。契約者が納税者本人であり、対象となる建物や家財が本人または生計を一にする親族の居住に供されることが求められます。火災保険料そのものは原則として控除対象外です。旧長期損害保険は、制度改正前に締結され現在も有効な契約など限定的な条件で控除の余地が残ります。自動車保険や事業用資産に係る保険は通常、対象外です。
控除額の考え方と上限
地震保険は所得税と住民税でそれぞれ上限が設定されています。旧長期損害保険は経過措置の範囲で別枠の上限があり、合算には総枠の上限がかかります。
控除額は支払った保険料を基に計算され、上限額が設けられています。一般に、所得税では地震保険の枠に上限があり、住民税でも別途上限が設定されています。旧長期損害保険は小さめの枠が残る経過措置で、地震保険と同時に適用する場合は合計の上限に注意が必要です。年の途中で解約や減額があった場合は、控除証明書の記載額に従って適用します。夫婦で別々の契約をしている場合、各人が支払った保険料のみを各人の控除対象とするのが原則です。
年末調整と確定申告の手順
会社員は年末調整で、個人事業者や年末調整の対象外の人は確定申告で適用します。いずれも控除証明書が鍵となります。
年末調整では、保険会社から届く地震保険料控除証明書を添付または提示し、控除申告書へ金額を転記します。確定申告の場合は、控除証明書の情報を申告書へ記入し、原本の提出または電子申告で情報を添付します。年の途中で保険会社を乗り換えたときは、各社から届く証明書の合計額で申告します。控除証明書の紛失時は保険会社に再発行を依頼できます。電子交付に対応している保険会社では、オンラインで取得できることもあります。
よくある勘違いと非対象の例
火災保険料そのものは控除対象ではありません。短期契約や自動車保険、事業用資産の保険なども原則として対象外です。
地震保険と火災保険をセットで契約していても、控除の対象は地震保険部分に限られます。満期返戻金のある商品、積立型の特約、共済の一部などは取扱いが異なる場合があり、控除証明書に記載がなければ原則として対象外です。賃貸物件のうち自ら居住しない部分や、別荘など生活の本拠でない建物は控除の対象から外れることがあります。保険料の支払者が本人以外である場合にも適用できないのが通常です。
控除を最大限活かすコツ
証明書の到着・金額・対象期間を早めにチェックし、家族内の契約者と支払者を一致させます。更新時は対象外商品への切替に注意します。
秋以降に届く控除証明書は、勤務先提出や申告に使うため保管場所を決めておきます。家族が地震保険に加入している場合でも、契約者と実際の支払者が異なると適用できないことがあるため、更新の際に名義と支払方法を確認します。保険の見直しでは、対象外の特約が増えて控除額が減るケースもあるため、商品の設計と控除の関係を担当者に確認してから契約すると安心です。
ケース別の留意点
住宅の新築・購入、転居、同居開始など生活の変化がある年は、対象資産や生計同一関係の確認を徹底します。
住宅を新築・購入した年は、火災保険加入と同時に地震保険を付帯することが一般的です。控除の対象は地震保険部分なので、証明書に記載された金額を申告します。転居で旧居が賃貸に変わった場合は、居住の実態がなくなるため控除対象から外れることがあります。親族の同居開始により、生計同一の要件を満たすなら、契約対象の家財や建物の扱いが変わることがあり、契約内容の変更手続きとともに控除の要件も確認します。
損害保険料控除についてのまとめ
現在の損害保険料控除は、地震保険を中心とする制度です。対象商品と上限、証明書の扱いを理解すれば、年末の手続きがスムーズになります。
地震保険は家計を守る備えであると同時に、税負担の軽減にもつながります。控除証明書の管理、契約名義と支払者の一致、更新時の対象確認を徹底すれば、適用漏れを防げます。旧長期損害保険の経過措置が残る契約は、記載額どおりに申告し、地震保険と合わせた総枠の上限を意識します。
年末調整か確定申告かを見極め、必要書類を揃えて早めに手続きすることがポイントです。不明点は保険会社や税務の専門家に確認し、正確な申告で家計とリスク対策の双方を最適化しましょう。