全部保険
全部保険とは、火災保険の加入方式のひとつで、保険金額が保険の対象とする保険価格と同等の価格で設定される方法です。
火災保険には「一部保険」「超過保険」「全部保険」という3つの加入の仕方があります。その中で全部保険は、契約時に建造物の評価額を決め、その評価額と同じ金額を保険金額として設定する方式です。これにより、もしもの時に損害額に相当する保険金を受け取ることができ、また保険料を余分に支払ってしまうことも避けられます。火災保険の基本的な考え方として、損害を受けたときにちょうどその損害を補償する仕組みであるため、利益を得ることは許されません。全部保険はその原則にもっとも忠実な加入方法といえます。
全部保険の概要と仕組み
評価額と保険金額を一致させることで、過不足のない補償を受けられる仕組みです。
火災保険に加入する際には、建物や家財などの保険対象物の評価額が基準となります。全部保険ではこの評価額と同額を保険金額とするため、実際に損害が発生した場合にはその損害額に相当する保険金を受け取れます。例えば建物評価額が2,000万円であれば、保険金額も2,000万円と設定し、全焼してもその範囲で補償が可能です。部分的な損害であれば、その損害割合に応じた金額が支払われます。超過保険のように余分な保険料を払うこともなく、一部保険のように補償が不足するリスクもないため、もっとも公平な制度といえます。
全部保険のメリット
過不足のない補償を受けられることが最大の利点です。
全部保険のメリットは、損害額に応じた適正な補償が得られる点にあります。火災や自然災害などで損害が生じた場合、評価額と同額の保険金額を設定しているため、損害額に見合った保険金が支払われます。また、保険料を無駄に払いすぎることがないため、長期的に見て経済的にも合理的です。さらに、契約者は安心して生活や事業を営むことができるため、リスク管理の面でも優れています。
全部保険の注意点
利益を得ることはできず、あくまでも損害額までしか補償されません。
全部保険であっても、損害額以上の保険金が支払われることはありません。損害保険の基本原則として「保険金によって利益を得ることは禁止」されているため、たとえば評価額2,000万円の建物が1,000万円の損害を受けた場合、支払われるのは1,000万円までです。契約時に「全部保険にしているから必ず全額出る」と誤解しているとトラブルにつながることがあります。そのため、自身の契約内容が全部保険になっているかどうか、また評価額が妥当かどうかを定期的に確認することが大切です。
全部保険についてのまとめ
全部保険は、評価額と保険金額を一致させることで過不足なく補償を受けられる合理的な加入方法です。
火災保険において「一部保険」「超過保険」「全部保険」の違いを理解することは非常に重要です。特に全部保険は、損害額に応じた保険金を受け取ることができ、過剰な保険料負担を避けられるという利点があります。
一方で、損害以上の保険金は受け取れないため、誤解を避けるために契約内容を確認しておくことが不可欠です。火災保険に加入している方は、今一度自分の契約が全部保険になっているかをチェックし、必要に応じて見直しを行うことで、万が一のトラブルに備えることができます。