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地震調査研究推進本部

学術に基づく評価を政策と実務へ確実に橋渡しし、長期評価・地震動予測地図・観測体制の整備を通じて地震防災力を底上げするための中核的枠組みです。

設置の契機は阪神淡路大震災です。地震防災対策特別措置法に基づき文部科学省に置かれ、政策委員会と地震調査委員会を中核に、長期評価や地震動予測地図の作成、重点的調査観測計画の推進、成果の社会実装を統合的に進めます。評価結果は国の防災基本計画や自治体の地域防災計画、企業の事業継続計画などで活用されます。

設置の背景と法的根拠

大震災の教訓を踏まえ、調査研究の成果を政策へ迅速に反映するための恒常的な仕組みとして整備されました。

1995年の阪神淡路大震災を受け、地震防災対策特別措置法に基づいて本部が設置されました。過去は研究成果が行政や住民へ十分届かない課題があり、これを改めるため、長期評価の体系化、地震動予測地図の公表、観測体制の強化、わかりやすい情報発信を一体で進める枠組みが求められました。

組織構成と役割

政策委員会と地震調査委員会が両輪となり、方針決定と技術的評価を分担しながら透明性の高い運営を行います。

政策委員会

本部全体の基本方針や重点課題、成果の社会実装に関する方向付けを担います。関係省庁や自治体、研究機関との連携の在り方もここで整理されます。

地震調査委員会

個別の地震活動に関する長期評価や、評価結果の公表の妥当性を技術的に審査します。活断層・海溝型の最新知見や地殻変動データを統合し、モデルの更新を継続します。

事務局と連携機関

文部科学省の下で観測網の整備、データ共有、解析標準の整備、成果の発信を推進します。気象庁、産総研、大学、自治体などと協力し、観測の空白や手法の偏りを減らします。

主な成果と提供情報

長期評価と地震動予測地図、重点的調査観測計画を中核に、科学的根拠を備えた情報を定常的に公表します。

地震動予測地図

一定期間内に特定の地震動を超える確率などを地理的に表現します。地域差や不確実性を踏まえ、設計や計画の基礎資料として用いられます。

長期評価

活断層・プレート境界ごとの発生可能性や規模の見通しを、観測と歴史資料、地形地質調査の統合により示します。更新時には前提条件やデータの変化も明記します。

重点的調査観測計画・解説資料

観測網の高密度化、標準化、データの即時性向上を図るとともに、解説資料を整備して利用者が誤解なく活用できるよう支援します。

社会での活用シーン

自治体の計画づくりからインフラ耐震、事業継続、教育・報道まで、幅広い分野で基礎資料として機能します。

自治体の地域防災計画・土地利用

想定地震動を踏まえ、避難計画や防災拠点の配置、まちづくりの指針に反映します。ハザードマップや住民向け啓発に用いられます。

インフラ・企業の耐震化とBCP

重要施設の補強優先度づけ、代替ルートや在庫配置の検討、復旧目標の設定など、実行計画の根拠となります。保険や再保険のリスク評価でも参照されます。

教育・報道・住民啓発

科学的根拠に基づく解説や教材化を通じ、確率の意味や限界を含めて正しく伝える役割を担います。

最新動向と課題

不確実性の適切な伝達、観測網の維持更新、人材育成、学際連携の強化が重要テーマです。

地震現象の不確実性を前提に、モデルの仮定やデータの限界を明示し、誤読を防ぐガイドを整備します。観測の空白を減らし、データ同化や解析の高度化、人材育成、関係機関との連携強化を継続します。

住民・事業者ができること

想定地震動の把握、耐震性の確認、備蓄と訓練の実施、保険やBCPの点検をセットで行うことが実効性を高めます。

自宅や事業所の位置する地帯の想定地震動を確認し、建物の耐震性や家具固定、安否確認方法、代替拠点や代替調達の準備を具体化します。保険の補償内容や免責条件の確認も再建可能性を高めます。

地震調査研究推進本部についてまとめ

科学に基づく長期評価と地震動予測地図、観測体制の強化を通じ、政策と現場の備えを結ぶハブです。受け手側の理解と実行が被害軽減の鍵となります。

評価結果は断定ではなく見通しです。数値の意味を踏まえ、地域や組織の現実に合わせて耐震化や訓練、BCPを具体化することで、命と暮らしを守る力が高まります。