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一部保険(損害保険における保険金のかけ方)

損害保険における「一部保険」とは、保険の対象となる財産(建物や家財など)の実際の価額(時価や再取得価額)に対して、全額ではなく一部のみを保険金額として設定する契約形態を指します。これは、被保険者が意図的に保険金額を抑えて契約する場合や、予算の都合などによって必要額を下回る保険設定となる場合に該当します。

たとえば、時価4,000万円の建物に対して、2,000万円分の火災保険をかけたとします。この契約は保険対象額(4,000万円)の半額である2,000万円のみを補償対象として設定しているため、「一部保険」に該当します。こうした場合、万が一火災や自然災害で損害が発生しても、実際に支払われる保険金はその保険割合(この場合50%)に基づいて計算されることになります。

比例填補の考え方と保険金の計算式

たとえば1,000万円の損害が発生したとしても、保険で補償されるのはその50%に相当する500万円となります。つまり、被保険者自身が損害の残り半分を自己負担することになるため、補償の過不足が生じるリスクがある点には十分注意が必要です。

この仕組みは「比例填補(へいほてんぽ)」と呼ばれ、一部保険契約において特に重要な考え方とされています。保険金の支払いは、次のような計算式によって算出されます。
支払い保険金額 =(損害額 × 保険金額)÷ 保険の対象の価額

これにより、契約時の保険金額が低いと、その割合に応じて支払われる保険金も低くなります。つまり、正しく保険金額を設定していないと、いざというときに十分な補償が受けられない可能性があるということです。

地震保険と一部保険の関係

なお、地震保険など特定の保険商品においても、一部保険の考え方は影響します。地震保険では、被害の程度に応じて「全損」「大半損」「小半損」「一部損」などの区分に分けられており、それぞれに支払限度が設定されています。

一部保険契約の場合、たとえ損害が全損に該当したとしても、契約金額が低ければ、支払限度額に基づいた一部の保険金しか受け取れないことになります。さらに、地震保険において支払われる保険金には「総支払限度額」があり、これを超える請求が発生した場合、支払い額は調整されます。その場合の計算式は以下の通りです:
支払い保険金額 =(算出保険金 × 各契約の支払限度額)÷ 全契約の支払限度額の合計

まとめ

一部保険契約は保険料を抑えられる一方で、実際の補償額に制限が生じるリスクがあります。そのため、契約時には対象物件の時価や再調達価格を正確に把握した上で、適正な保険金額を設定することが非常に重要です。

保険料を抑える工夫は必要ですが、必要な補償が得られなければ本末転倒です。万が一のときに確実な補償を受けるためにも、「一部保険」の内容とリスクをしっかり理解し、契約内容を見直すことが大切です。